79.バースデープレゼント(最終話)

5/30
1820人が本棚に入れています
本棚に追加
/828ページ
「好きだよ、間宮。好きだよ。…こういう事がどうしても、ずっと言えなかったんだけど」 小さな水の雫がぽとりぽとりと一粒ずつ落ちるみたいに、ゆっくりと言葉を紡ぐ。 「自分が最後にこうする事しかできないのがわかってたから、どの口がそんな事言うんだって自分で思って、言える資格がないような気がして、どうしても言えなかったんだ。ずっと言えなかった。でも、嘘じゃないんだ。なんにも嘘じゃないんだ。好きなんだ。ほんとに好きなんだ」 信じてほしいと訴えるように、涙のせいで不安定に揺れる声のまま、ゆっくりと、けれど必死に言い募る。 そういえばずっと頑なだった。言わない方が不自然だったこの言葉を、結局今の今まで一度も宗司の声で聞いた事がなかったのだ。何か思うところがあるのだろうなとは思っていた。 「…あはは、なにそれ。とっくに知ってるよそんなの。僕の事好きなんだろって言ったら、うん、ってすぐ素直に頷いちゃってたじゃん。それとどう違うんだよ」 迷った末に言葉にしたのかもしれないが、今さら何を言っているんだろうかと冬真は笑ってしまう。 「そうなんだけど。自分の口でちゃんと言えなかった。…そりゃ、間宮の言う通り同じ事なんだけど。俺の気持ちの問題」     
/828ページ

最初のコメントを投稿しよう!