79.バースデープレゼント(最終話)

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「そういう生き方だってあるって知ってるのに。幸せになれるかどうかなんて、そんなの自分次第だよ。普通じゃなくても二人でちゃんと幸せになってる人たちだって、きっといるのに。俺できないんだよ。人から後ろ指さされながら生きてくのが怖いんだよ。それだけなんだよ。男の俺じゃ間宮をちゃんと幸せにしてやれないからとか、そんな理由ですらないんだよ。間宮のためですらないんだよ。自分を守りたいだけだよ。情けないだろ。できるんだったらそうしたかった。間宮がいい。そばにいたい。間宮がいいのに。こんなに離したくないのに、なんでそれなのにできないんだろう。なんでまだ自分の事守りたいんだろう。なんで、そんな事より間宮が大切だって、なんでそんな風に言えないんだろう」 震える肩も縋り付いてくる腕も何もかもが痛々しくて、可哀想で、こんな宗司を見ていたら、なんで自分は女の子じゃなかったんだろうと初めて本気でそんな事を思った。 自分が女の子だったらよかった。それだけの事なのに。たったそれだけの事だったのに。 「間宮、俺ね、間宮のために何かしてやりたかった。俺にしてやれる事なら何だってしてやりたくて、それなのに俺は意気地が無くて、してやれる事なんてなんにもなかった」 「…あはは、いつもしてくれたじゃん。一生懸命、あれこれ」 笑って言ったのに、宗司はそうじゃないと首を左右に振った。 「俺がぜんぶ守ってやりたかった。遠くの未来までずっとぜんぶ守るから、俺がいるから大丈夫なんだよって言いたかった。だって間宮そんなんなんだもん。いつまで経ってもそんなんなんだもん。間宮はちゃんとできないじゃん。今のままでいたいって言い続けるばっかりじゃん。心配で心配でしょうがないんだよ。間宮は守ってもらう必要なんかないって言うんだろうけど、俺は守りたかったんだよ。…でもできる事は何だってしてやりたかったのに、俺がこんなだから、なんにも伴わないから、結局なんにもできなかったんだ」     
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