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「ずっとこのままじゃ駄目だって未来を見据えられる宗司くんは偉いよ。それに自分の事が大事でどうしていけないの?自分や自分の人生をちゃんと大事にして何がいけないんだよ。そうやって自分の事を大事に真剣に考えてるから、今までだってずっと真面目に優等生でちゃんと生きてきたんだろ。そんな風にできる宗司くんを僕は尊敬してるし信頼してるんだよ。そういう宗司くんが僕は好きなんだよ」
気ままに生きている自分とは全然違う宗司を、尊敬して信頼していたからこそこんな関係になってしまったのだという事は以前にも伝えたはずだ。
腕の中で泣いてばかりいるそのかたまりを抱きしめながら、だからそんな事で自分を責めなくてもいいのにと思った。
「…それにね、僕だってできないんだよ」
天井を見つめたまま、宗司の髪を撫でる。
「できない理由が宗司くんとは違うだけで、僕にだって覚悟なんてできないんだよ」
そう言うと、宗司はずっと伏せていた顔をゆっくりと上げた。
上半身を起こして冬真を見下ろす姿勢になる。
「ずっとそばにいろよなんてそんな事、僕にだって言えない。これから先の宗司くんを、丸ごとぜんぶ僕のものにするなんてできないんだよ」
「………」
本当は知っていた。
宗司が自分に引き止めてほしい事も、ずっとそばにいろよって言ってほしい事も。
そんな事を言われたとして宗司がどこまで応えられるのかは知らない。けれど、言ってほしいという事は知っていた。
自分から離れようとしているくせに、離れたくないと言ってほしいのだ。矛盾している。身勝手だ。
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