1823人が本棚に入れています
本棚に追加
/828ページ
けれど宗司のこの目が、いつだってやさしく向けられているこの薄茶色の瞳が、後悔にまみれた色をして自分の存在を見つめるような日がくるのは、それだけはきっと耐えられないと思った。
だって他人から、家族から、宗司がどういう顔をされる事になるのか知っている。自分と宗司の関係を疑った時の戸惑いに満ちた春輔の表情を覚えている。
後悔させないなんて言えるわけがない。
宗司の後悔を受け止められるわけがない。
だからそんな言葉が言えるわけもなかった。
「引き受けきれないんだよ。宗司くんを引き止めてそばにいろよなんて言って、僕は宗司くんのぜんぶを引き受けるだけの勇気がない」
ずっと黙って聞いていた宗司は、そこでようやくゆっくりと頷いた。
「…うん、そうだよね。わかってる」
噛みしめるように。諦めるように。静かに冬真の言葉を飲み込んでいくのがわかる。
たとえ宗司自身がどこまで応えられるのかわからないのだとしても、たぶんこれが宗司にとって、残っていた唯一の可能性だった。
その瞬間、自分たちをどうにかつないでいたような細い糸は切れたのだと思った。でもそれ以上どうしようもなかった。
「…すっかり泣き顔になっちゃったね」
こちらをじっと見下ろしてくる、その腫れぼったくなってしまった宗司の目元を指先で撫でてやる。
最初のコメントを投稿しよう!