1843人が本棚に入れています
本棚に追加
でもそうして筒抜けだったから、宗司がどれだけひたむきに気持ちを向けてくれていたのか、そのせいでどれだけ苦しかったのかぜんぶ何もかも知っていて、それを受け止めるのがただうれしかったのだ。
「あのね、宗司くん」
「ん?」
「僕ね、やっぱりなかった事になんてしないよ」
「…うん」
「僕たちさ、はじまりは勢いだけだったし考えなしだったけど、でも僕と宗司くんのあいだにあったものはさ、なんにも嘘なんかじゃなくて、ちゃんと本物だったんじゃないかなって、僕は思ってるよ」
恋愛感情でつながった関係だったかどうか、今だによくわからない。その正体は解明しきれないままだ。それでも宗司と自分のあいだにあったのは愛情としか呼べないものだった。
宗司は頷く代わりに静かに微笑んだ。だから冬真は続けた。
「何も変わらないでいるなんてできないんだとしてもね、今ここに、僕と宗司くんのあいだにこういう気持ちがあったってことはね、これから先もずっと変わらないままだよ」
いろいろな事が変わるのだとしても、二人のあいだで二人だけの感情をやり取りしたという事実は、これから先も永遠に変わらない。永遠を約束する事なんかできなくても、それだけは間違いない。
「…うん、そうか。そうだよね。間宮いいこと言うな」
うれしそうに宗司が笑った。だからたちまち自分もうれしくなる。
最初のコメントを投稿しよう!