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本当にきれいな目だな、と思いながら、やさしく見下ろしてくる薄茶色の瞳を、じっと見ている。ただただやさしいばかりのこの瞳を、こうして本当はまだずっと見ていたい。いつまでも見ていたい。
「…好きだよ」
もう涙はこぼれていない。穏やかな微笑みで宗司がこちらの頬を撫でながら言う。
それを見上げながら笑って答える。
「…あはは、うん。照れるねそれ、今さらだけど」
「うん、今さらだけど」
「もう一回言って」
「好きだよ」
「…もう一回」
手を伸ばして宗司の瞳のそばに触れる。宗司は笑った。
「あはは、なんでそんなかわいいの、間宮は。何回でも言うよ…好きだよ」
子どもの熱を測るみたいに額と額をくっつけてきた宗司に甘えて擦り寄るようにすると、宗司はふっと息を漏らすように、幸せそうに、また笑う。
「かわいいね、間宮。…かわいい」
「………」
「好きだよ」
ずるくて身勝手に自分を振り回し続けた、けれど誠実でありたいと望み続けていた瞳がこちらだけを、ただまっすぐに見ている。
やさしくて真摯な声は好きだよと繰り返し耳をくすぐって、その言葉はまるで静かな雨のように何度も何度も降らされる。
そしてこうしてまた注ぎ込まれる気持ちを、ただ受け止める。
そのことが、こんなにも心をいっぱいにする。気が遠くなりそうな幸せの中にいる。
宗司の薄茶色の瞳の中に映る自分は、自分でも知らなかったような満たされた顔をしまっている。
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