4.愛の呪い

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それとはまったく矛盾するように、今自分が好んで一緒にいるのは、このどうしようもない、どうにかなりようもない冬真なのだ。予期せぬ事故のような、結婚どころか、恋愛なのかどうかすらよくわからない関係ではあるけれど。別に結婚やら親の期待から逃げたいがための現実逃避だとか、そんなつもりで始めたわけではない。仮にそうだったとして、他にもっとましなやり方がいくらでもあるだろう。 きっかけの理由も、続けている理由もわからない。冬真との関係はやめようと思えばいつでもやめられる。ただ、すぐに手を離してしまうには、思いのほか、居心地が良かった。 宗司はため息をつく。どうせこの身勝手でわがままな男の事だから、いつ急にもうやめたいと言い出すかもわからないと、そんな風に思っていたのだ。ある日突然しらふに戻ったかのように、また全部の責任をあたりまえみたいにこちらに押し付けて、今度こそ逃げていくんじゃないかと、そう思っていた。 そしてもしそうなれば、次こそはもう引き止めたりするつもりはなかった。 ところがその予想に反して、思いがけず関係は長く続いている。まるで冬真の方も、この関係が心地いいのだというように。その事がかえって、宗司のため息を深くさせている。
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