79.バースデープレゼント(最終話)

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はあー、と夏樹が深いため息をついて、ぐるりと控室を見渡す。 「父さんと、春輔兄さん一家は?」 「時間まで散歩してくるって。小春ちゃんがここで待ってるの飽きちゃったみたい」 「そっか。じゃあ俺これから写真の撮影とかあるから、また後で式の時に」 そう言って夏樹は冬真たちの元を離れ、来てくれている親戚たちに軽く挨拶してから部屋を出て行った。 六月の今日、この日。 それは宗司の誕生日でもあった。 あの日を最後に宗司とは一度も会っていない。 引越し先の住所はもちろん知らない。 連絡先もあの後すぐに変えてしまった。 それでも本当は一度だけ、無断で借りた秋斗の電話から宗司の番号に掛けてみた。 意味も理由もない。ただの衝動でそんな事をしてしまった。もし出たらすぐに切るつもりで。 聞こえてきたのは、番号が使われていないという機械のアナウンスだった。向こうも同じように連絡先を変えてしまったようだった。 きっと揺らぎたくなかったのだと思う。自分と同じで。 カフェのバイトは先月辞めてしまった。店の中に立ち込めるコーヒーの香りが宗司を思い出させるのだ。はじまりの日みたいに、客としてふらりとやって来ないかな、なんてどこかで考えてしまうのも嫌だった。     
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