1843人が本棚に入れています
本棚に追加
「立会人の皆様、お二人は皆様方の前に、永遠の愛を誓いました。この二人がここに夫婦となる事をご承認いただけましたら、どうぞ盛大な祝福をお送り下さい!」
女性司会者が高らかに声を上げる。促されるまま、はいはい、と冬真は手を叩く。
厳かな雰囲気が漂う白いチャペルの中。兄とその花嫁は照れ臭そうに、拍手を送るゲストたちに笑顔を向けている。
恥ずかしくないのかな、と思う。夏樹に全然似合わない。浮かれているとしか思えない。何の法的根拠もない結婚証明書だかにうれしそうにサインして見せびらかして、しかもキスまでするのだ。親兄弟も親戚も見ている前で。結婚式ってこういうものだ。でも、いつもの夏樹だったら鼻で笑いそうな演出ばかりだ。
ばかばかしい。こんなにみんなを巻き込んで盛大に祝わせておきながら、三組にひと組は別れてしまうくせに。
それなのに、それでもやっぱり、壇上に立つ二人の永遠の約束とその決意は眩しかった。
だってそこにはきっと覚悟があった。
その事を、どうやっても覚悟が持てなかった冬真はもう知っている。だからとても眩しく思えた。
チャペルの外に出てから行われたブーケトスで、花束は新婦の友人が受け取ったようだった。花束を持ったその女性を、新郎新婦が間に挟んでの写真撮影が始まる。
その傍らで、司会者がマイク越しに明るい声で、次のイベントへと進行させていく。
最初のコメントを投稿しよう!