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隣では秋斗が、散々いらないと文句をつけていた冬真を見ていただけに、腹を抱えて笑い転げている。
「あははは!良かったじゃん、冬真くん。よりによって、あんなにブーブー言ってたやつのとこに来ちゃったね。でもおめでとう。次に幸せになれるの冬真くんだよ」
「いやいや、まったくもって余計なお世話だよ…」
「ほらほら、写真撮影だって。行っといでよ」
「はあー…なんなの、もー…」
兄と兄嫁に挟まれながら、ブロッコリーを持ってカメラの前でにっこり愛想良くポーズを作る。うんざりした本心はこの時ばかりは包み隠してやる。兄たちの結婚アルバムに残るのかもしれないし。我ながらいい弟だ。
「お疲れ様ー。はいこれ、冬真くんの分ももらっといてあげたよ」
ため息をつきながら秋斗の元へと戻ると、紐がついた赤い風船を手渡された。ふわふわと風に揺られている。
「ありがと。これたぶん、みんなで飛ばすんだよね。飛ばしたら終わりかなぁ。もうこんな事ばっかりしてないで、早くごはん食べたいんだけど」
それに喉も渇いた。シャンパンでの乾杯だけは心から楽しくできるような気がする。
「あはは、もうちょっとで披露宴じゃないの?お腹空いたよね」
秋斗とそうやって話していると、司会者がゲストをきょろきょろと一通り眺め回す様子で、確認のアナウンスを入れる。
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