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「皆様、風船はお一つずつお持ちいただけましたでしょうか?お持ちでない方はいらっしゃいませんか?」
スタッフに誘導されて全員が同じ場所に集まり始めるので、冬真も秋斗と二人揃ってそちらの方へと歩み寄った。こちらを向いて立っている新郎新婦の前に集まったゲストたちの一番後ろで、司会者からの次の指示を待つ。
風船はもう今すぐにでも飛んでいきたいのだと訴えるように、空に引っ張られるように、くいくいと上に向かっていこうとする。
「…皆様にはこれからこの風船を、空に向かって飛ばしていただきたいと思います。風船に願いを託して空に飛ばすと、願いが叶うと言われているんです」
新郎新婦とゲスト一人ひとりが手に持った、カラフルな風船たちが揺れている中、司会者がそんな風に説明を始める。
願いが叶う?ほんとかよ、と思いながら冬真は紐の先の赤い風船を見つめる。
願い事か、と思う。
そして思い出す。
今日のバースデーケーキの願い事、宗司はできたんだろうか。
去年の誕生日は何を願っていいのかわからなくて、結局願い損ねたのだと、ずいぶん後になってから告白されたのだ。
今日宗司がどう過ごしているかはわからないけれど、風船に託せば願いが叶うと聞いて、その事はすぐに思いついた。
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