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5.はちみつレモンの帰り道
『もしもし?あー、ごめん。ほんとに遅くなっちゃった。今どこ?…え?駅の前って外?遅くなるからどっか店入って待っててって、さっき』
話が終わるよりも先に目が合ってしまったので、耳からスマホを離して通話ボタンを押す。
「おつかれー。遅かったねー」
夜、宗司のマンションの最寄駅。小走りで駅から出てくるスーツ姿の宗司に、ひらひらと手を振る。吐く息が白い。
「ごめん、一度帰りかけて会社出たんだけど、もっかい呼び戻されちゃって。だいぶ待っただろ。メールしといたんだけど、見てなかった?」
「見た見た。遅くなるからどっか入って待っててってやつだろ?」
「そうそれ。だったらなんでこんなとこで…」
目配せして、こっそりと宗司にだけ見えるように、前方を指差す。
「…あれがさあ、なかなか面白くて、見てたら気になっちゃって」
「え?」
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