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六年二組。
教室の引き戸をほんの少しだけ開け、細い身体を滑り込ませる。
中は薄暗く、あともう数分もすればここも闇に呑まれるだろう。
彼女は真っ先に自分の机に向かった。
赤いランドセルが置かれている。
息も絶え絶えといった様子で彼女はランドセルを背負いながら呟く。
「早く帰れば良かった」
そのとき、廊下の奥からギュッと上履きの擦れる音が聞こえ、息を飲んだ。
重みのある足音。
あっちにふらふら、こっちにふらふらと安定しない。
少女の喉からヒュッとか細い悲鳴が漏れると慌ててしゃがみ、机の影に隠れる。
「ふぅふぅ、トウコちゃぁん……待ってよぉ。トウコちゃぁん」
ねっとりとへばり着くような甘えた声が廊下に響いた。
おめかししたような、わざと作られた声に少女の肌はびっしりと鳥肌で覆われた。
恐怖に身がすくみ、足が震えて力が入らない。
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