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来ないで、来ないで。
声なく呟く唇は震えて。
だが、彼女の祈りも虚しく、無慈悲にも教室のドアが開け放たれる。
「トウコちゃん、床屋さんごっこは飽きたの? 今度はかくれんぼ? もう暗いから、続きはサッコの家でやろう? トウコちゃん、今日は泊まってくれるよね?」
はぁはぁ、ふぅふぅと鼻息も荒い女の子が教室に入ってきた。
ハンプティ・ダンプティ。
誰かが彼女をそう呼んでいたが、言い得て妙だと思う。
だが、ハンプティ・ダンプティの方がまだ愛嬌があるというもの。
教室に入ってきた彼女は、サキコは、少女にとって化け物でしかなかった。
「トウコちゃぁん」
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