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シャキシャキ。
開閉して擦れる刃物の音は少しずつ大きくなってくる。
心臓は警鐘のように早く打ち鳴らされ、痛みすら感じてきた。
少女は息を殺し、唇を噛んだ。
目を瞑れば追跡者の顔が浮かび上がる。
真ん丸で脂ぎった肌に、目や鼻、口といったパーツがすべて中心に集められた顔。
歯を剥き出して笑っている。
助けて。
誰か、助けて!
息を殺し、身を震わせて、何分過ぎただろうか。
いや、実際は数分も経っていないかもしれない。
いつまでも震える少女の頭上に、ねっとりとした声が被さった。
「トウコちゃぁん、みぃーつけぇたぁ……あはっ!」
トウコと呼ばれた少女はふっと意識を手放した。
悪夢なら早く目覚めて、と。
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