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シキの顔を見てしまった者は恐怖に震えながら、周りに触れ回ったという。
あの瞳は呪われているのではないのか―
シキが顔を見せず、いつもフードを目深に被っているのも噂に拍車をかけていた。噂というものは早いもので行く所、着くところ人々からはあまり歓迎されていない。
なので、ここのような田舎は大丈夫だと思っていたのだが。
ようやく、食事を終え宿主から冷たい視線を浴びながら、宿屋を出た。
「ここも、もうだめか」
ため息をつきながら空を見上げる。
快晴でやりづらいと思っていた上にこの村に伝わってしまった噂の類い。
もう、次の街へ行くしかない。何のために噂が広まってまで人間をやめたのか。
それはそうとしても、
「本当にあいつ、どこにいるんだよ」
苦々しく呟く。
この手で殺めた弟よ―。
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