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 ジュリアンに初めて人と触れ合うことの喜びを教えたのは、今までに付き合ったただ一人の恋人、フレッドだった。ジュリアンの進学が決まった直後、彼はジュリアンを捨てて女性と結婚した。彼は初めてジュリアンの全てを満たし、一瞬でそれを奪い去っていった。あまりのショックで食事も出来ず、口も聞けず、放心状態でフランス研修どころではなくなってしまったのだ。 その時、ジュリアンは自分の恐ろしいまでの弱さを知り恐怖に慄いた。後先考えず、無邪気に人を好きになってしまった自分を呪ってやりたいとすら思った。そんな辛い思いをしてまで、また誰かを好きになんてなりたくない。そう思っていたのに――ちょっと優しくされただけで、皓を意識してしまうなんて。いくらなんでもおかしいだろうと、ジュリアンは自分を罵った。  自転車と共に戻って来た皓に教えられた通りに荷台に乗って、慣れないことに身を竦ませていた。皓の身体には触れまいとジーンズのベルトを掴んでいるので、却ってバランスが取りにくい。身体は近いのに無言でいる状態に気詰まりを感じていると、ふいに皓が自転車を漕ぐペースを落とした。 「こっちであってるか?」  浜辺から高校の前まで戻ってきていた。ジュリアンは、少し先に目印にしていた店があるのを確認して頷いた。 「あの青い店の角を左だよ」 「日本語じゃ、あの青い店は『こんびに』って言うんだよ」 『こんびに?』 「コンビニエンスストアだよ。イングランドにもあるだろ?」 「あぁ……コーナーショップ……」 「イングランドではそう呼ぶのか?」 「うん」     
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