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ところが、新太を中心にグローバライズされたクラスメイト達は、臆することなくジュリアンを自分達の輪に引きずり込もうとしてきた。戸惑いつつも、当たり前のように受け入れようとしてくれる人達を前にしてジュリアンは純粋に嬉しかった。それなのに、またうまくやれなかった。今は何も知らないクラスメイトの背中にもたれながら、長く忘れていた安らぎを得ている。悪いとは思いつつも、ジュリアンは束の間、誰かの温かさに触れていたかった。
だが、そんなささやかな願いも、自らを裏切る胃のせいですぐに吹き飛ばされた。
「と、止めてっ」
「え?」
皓が自転車を止めるや否や、ジュリアンは弾かれたように荷台から降りた。皓の目の届かない場所まで行きたかったが、少し離れた所で我慢できずに吐いてしまった。
「大丈夫か?」
「うっ……」
駆け寄ってきた皓に、よろめいたところを支えられ、ジュリアンは彼のジーンズを汚してしまった。あまりの醜態に涙が溢れ、視界を遮った。穴があったら入りたい。顔を上げることも出来ず、ジュリアンは何度も謝った。
「しーっ、落ち着けって。洗えば済む。問題ない」
皓は全く動じた様子を見せず、穏やかにジュリアンの背中を撫でてきた。
「ごめんなさい。迷惑かけるから……放っておいて欲しい」
皓の手をかわすように離れたジュリアンは、まだ震えが止まらない手に顔を埋め塀に寄り掛かった。暫くして、近付いてきた皓が同じように壁に背を預けるのを気配で感じた。寒気がしてきて、ぶるっと身を震わせたジュリアンが両手で身体を抱くようにすると、皓はおもむろに着ていたパーカーを脱ぎ、それをジュリアンの肩に掛けてくれた。
「わ、悪いよ……」
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