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 父親とルイーズはどんな障害も物ともせず、お互いを諦めない。そんなふうに想い合える相手がいるのはどんな感じなのだろうか。二人の事でジュリアンの気持ちが暗くなるのは、子どもの頃のように両親の不仲のせいでも、怒りからでもない。ただ父親が羨ましいからだ。 「大丈夫か?」   皓の手が背中にそっと添えられ、ジュリアンは物思いから引き戻された。 「うん」  ジーンズを洗濯してもらうために皓にバスルームの場所を教えると、待っている間少しだけ休もうと自室のベッドで横になった。ようやく帰り着いて気が抜けてしまったジュリアンは、急に眠気に襲われ、どうしても瞼を開けていられなり、そのまま眠ってしまった。  ジーンズの洗濯が済んだ皓は、大量に水分を失っているであろうジュリアンのため水を汲もうとキッチンへ行った。いかにも引っ越してきたばかりという雰囲気で、まだ積まれているダンボールから異国の香りが漂っている。白い棚に申し訳程度に並んだ食器の中からコップを取り、浄水器の水を汲んで自分も一息つく。ついでに時間が気になって携帯電話を確認すると、いつの間に時間が経ったのか、既に夜中の二時を過ぎていた。酔っ払いか何か分からないイングランド人は放っておけないし、ジーンズも濡れたままだ。 「まぁ、いいか」     
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