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 だが、皓が一番気になったのは、不安を通り越して怯えたようなジュリアンの態度だった。構って欲しさにわざとそういう態度を見せる女の子はたまにいたが、彼はそうじゃない。そんな子を初めて見たので、興味が沸いた。とはいっても、その場その場で困っている人を助けるのも、一夜限りの女の子とのお遊びも構わないが、誰かに深入りするのはごめんだった。 両親の離婚後、父親に連れられ、彼の母国アメリカに渡り、彼の再婚をきっかけに兼ねてから母親が望んでいたこともあり、日本に戻ってきた。そして、高校三年の今、もしアメリカに戻りたかったら留学や編入の道もあると言われたが、皓は既に高校付属の大学に進学することに決めていた。決めたというよりも受験はしないという楽な方向に流された、と言った方がいいかもしれない。日本にいるのかアメリカに行くのか。いずれ国籍も選ばなくてはならないが、多少の親の干渉はあっても、それは何かを決める理由にはならない。結局、日本人でもアメリカ人でもない自分は、どこに属しているのか分からない……。ポジティブに考えれば、何に対しても思い入れのない今の自分は、身軽で余計なしがらみはないということだ。ただ、皓は時々、どことも、誰とも繋がっていないのではないかという、言いようのない不安を感じる。   不意にジュリアンがごそごそと動いたので皓は我に返った。見ると、彼は口元を緩めて心地よさそうに枕に顔を埋めていた。 「ったく、気持ち良さそうに寝やがって」     
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