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その様子に、不本意にも和んでしまった皓は、誰も聞いている者はいないと知りつつ、わざと毒づいた。
翌朝、ジュリアンは目を覚ますとベッドの横に人がいることに驚いた。皓が椅子の背に肘をついて、じっと自分を見ていたのだ。昨夜と違い彼の長い髪は無造作に結わえられていて、一段とエキゾチックな雰囲気を醸し出していた。ジュリアンはストンと剥き出しの皓の脚に視線を移し、再び強い驚きを覚えた。何があったのかと顔を上げると、また皓と目が合った。状況に耐えられなくなって、けれども逃げ場もない。抱え込んだ膝の上に突っ伏した。
「……一人で何、暴れてる?」
「……僕のせいだ」
耳まで赤く染まるのを隠す術もなくジュリアンが顔を上げると、皓はニヤっと笑いかけてきた。鋭い目が面白そうに煌めいている。
「なんて顔だ、気にしなくていいって言っただろ?」
散々迷惑を掛けた挙句、椅子で一晩寝させてしまった。
「き、気にせずにはいられないよ……あ、あの……ニシモトサン――」
いきなりファーストネームで呼ぶことはいくらクラスメイトとはいえ、日本では失礼にあたると聞いていたが、ミスターも妙な気がして、ジュリアンは日本語で呼び掛けてみた。でもどうやら失敗だったらしく、フッと軽く鼻で笑われてしまった。
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