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 ベッドの周りを見回すが、そういえば昨日、そもそも鞄を持って帰った覚えがない。 「ああ、鞄?」  鞄を失くしたかと血の気が引きかけたところ、皓が床からひょいとジュリアンのリュックを持ち上げた。恐らく、それも皓が持ってきてくれたのだろう。 「あ、良かった……ありがとう……」 中からジュリアンが携帯を探り出すと、横から、すっと伸びてきた手にそれを奪われた。 「ちょっ……」  びっくりして取り返そうとベッドの上で腰を浮かすが、皓は平然一歩引いた。 「中は見ない」  皓は自分の携帯も取り出すと、今度は並べて画面を見せてくれた。慣れた手つきでプロフィールの交換を終えると、すぐに携帯を持ち主に返した。イングランドから持ってきたものなので、ジュリアンには見られては困るものがあるのだ。 「苗字はラザフォード? カッコイイ名前だな。何か困ったら連絡してこい。いい?」  皓の唇の片端がキュッと上がる。そうやって笑ったところもまたセクシーだった。その笑顔に見惚れながら、ジュリアンはこくりと頷いた。 「……ありがとう」 「じゃ。お大事に」     
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