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 トイレの個室から、もう一人のいつものメンバー、紘(ひろ)明(あき)が日本語で喚いた。 『出てから喋れ』  皓はタイルの壁から身を引き剥がすと、ドアを軽く一蹴りした。流水音と共に出てきた紘明は、皓の背中を力任せに叩いた。本人はおふざけのつもりだが、加減というものを知らない奴なので結構痛い。 『美奈ちゃん、めちゃくちゃ可愛いじゃん! お前、何が嫌なんだよ?』 『お前は気に入ってるならいいだろ? 手を洗えよ、手をっ』  再び背中に向かってきた紘明の手を皓はすかさずかわした。昨年も皓達三人と昨年度の留学生だったスティーブを入れた四人は随分遊び歩いていた。ある日、鳴井浜に捨てられていた消火器を紘明が暴走させて警察沙汰になったこともあった。その後に及んでゲラゲラ笑い転げていた新太と違い、紘明はすっかり怯え切ってしまい、一人、暴走消火器から本気で逃げ回っていた。笑い話だが、紘明の場合、そういったことでからかうと本気で喧嘩になるのでタブーだ。基本的には、優しい気質の持ち主なので、酒を呑んだ時に悪酔いしないように見張っておけば楽しくやっていける。 『ジュリアンが今日、来てたらなぁ……女の子達、めちゃくちゃ喜ぶだろうな』     
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