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 新太は地団太を踏んだ。 『去年、皓が付き合ってた人、美人だったよな』  紘明の言葉に皓は顔を顰めた。特定の誰かと付き合った記憶がない。 『誰のことだ?』 『三週間くらい付き合ってたじゃん、どっかの受付嬢?』  新太はそう言い、紘明と頷き合うと拳を突き合わせた。 『あぁ……いや、でも付き合ってたわけじゃない。身体の相性次第でそういうこともある』  関係を何度か持つと、相手が恋人のように接してくることがある。途端、皓は嫌悪でいっぱいになり、関係を続けるのが嫌になる。皓だって、望んでそんなふうになっているわけではない、理由は分からないのだ。 『ひでぇな。芸能人並みに美人だったよなぁ』  新太と紘明は申し合わせたように頷き合った。 『正直、よく覚えてない』 『お前、たらしにも程があるぜ!』  紘明は戒めというより、尊敬の念を込めて皓の広い背中を再びバシっと叩くと、先頭をきってトイレから出ていった。その痛みに皓はイラっとするが、黙っておく。紘明なりのコミュニケーションなのだ。 『俺も、身体の相性――って言ってみてぇー』  バタバタと下品な足音を立て、新太も後を追っていく。 「そりゃ、どうも……」     
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