446人が本棚に入れています
本棚に追加
新太は地団太を踏んだ。
『去年、皓が付き合ってた人、美人だったよな』
紘明の言葉に皓は顔を顰めた。特定の誰かと付き合った記憶がない。
『誰のことだ?』
『三週間くらい付き合ってたじゃん、どっかの受付嬢?』
新太はそう言い、紘明と頷き合うと拳を突き合わせた。
『あぁ……いや、でも付き合ってたわけじゃない。身体の相性次第でそういうこともある』
関係を何度か持つと、相手が恋人のように接してくることがある。途端、皓は嫌悪でいっぱいになり、関係を続けるのが嫌になる。皓だって、望んでそんなふうになっているわけではない、理由は分からないのだ。
『ひでぇな。芸能人並みに美人だったよなぁ』
新太と紘明は申し合わせたように頷き合った。
『正直、よく覚えてない』
『お前、たらしにも程があるぜ!』
紘明は戒めというより、尊敬の念を込めて皓の広い背中を再びバシっと叩くと、先頭をきってトイレから出ていった。その痛みに皓はイラっとするが、黙っておく。紘明なりのコミュニケーションなのだ。
『俺も、身体の相性――って言ってみてぇー』
バタバタと下品な足音を立て、新太も後を追っていく。
「そりゃ、どうも……」
最初のコメントを投稿しよう!