2.

5/20
前へ
/227ページ
次へ
 煮え切らない気持ちで返事をするでもなく呟くと、皓もはしゃぐ二人の後についてトイレから出た。高校三年生だが、付属大学進学組の彼らの暇な放課後だ。皓は友人達の騒がしさは嫌いじゃなかった。いつも胸をざわつかせる、何かが満たされない苛立ちを束の間、紛らわせてくれる。  その翌日、ジュリアンは相変わらずビクビクした様子で登校してきた。授業は少人数制で時限ごとに移動なので、午前中は話す機会がなかった。そのうちに声を掛けてみよう思っていたが、昼休みに入った途端、ジュリアンの方から皓の机に走るように近付いてきた。 「コウ」 「よう。もう大丈夫か?」  ランチに行こうとしていた皓は、コンビニの袋を片手に振り返った。 「うん。あ、あの、もっと早くお礼をとは思っていたんだけど……遅くなってしまってごめんなさい。先日は迷惑をかけて申し訳なく思ってる。でも、ありがとう」  先日にも増して堅苦しい言い回しの英語で丁寧に告げたジュリアンは、日本式にお辞儀までしてきた。 「あ、いや……気にするな」     
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

446人が本棚に入れています
本棚に追加