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 ジュリアン喋っている間、紘明は彼ではなく、助けを求めるように皓を見上げてくる。ジュリアンは少しも難しい単語は使っていない。加えて授業で使われているアメリカ英語より彼の英語の方が日本人的には理解しやすいアクセントのはずだ。冷静に考えれば分かるはずの内容で耳まで赤にして狼狽している紘明の姿が、女の子の前で取り澄ました笑みを浮かべている時とあまりに違う。皓は可笑しくて蹴飛ばしてやりたくなったが、そこは堪えて助け舟を出してやった。 『ベジだから、弁当持参だってよ』 『ベジ?』 『菜食主義。動物は食べないってこと』  皓の答えに、紘明が目を丸くする。 『じゃ、何食うわけ?』 「本人に聞けば?」  皓はジュリアンにも分かるように英語に切り替えた。紘明はぎこちなくジュリアンに向き直った。今度の会話はなんとか成立したようだが、まだ腑に落ちないようだった。 『早く行った方がいいぞ? 俺も持参だから』 『マジ? 俺だけかよ?』  紘明は二人に背を向けると、他のクラスメイトを追って走って行った。アメリカも日本も、一人でランチをしたくないというのは変わらないようだと皓は思う。 「一緒に食う?」 放っておいてもクラスの誰かがジュリアンに声を掛けるだろうとは思ったが、気付けば皓はそう尋ねていた。 「う、うんっ」  コクリと頷くジュリアンに背を向け、皓は教室の外に向かった。小走りでついてくるので、皓は途中で歩調を緩めた。 「どこに行くの?」 「俺達のたまり場」  何も分からぬまま皓の後をついて、ジュリアンは校舎の外側の階段を昇って行った。週末のお礼を言うだけのはずが、一緒にランチを食べることになって緊張していた。 「はぁ……」     
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