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 暫く待ったが、中から返事はない。何しろジュリアンが話をしたこともない相手を認識しているかどうかすら怪しい。 「ジュリアン? 同じクラスのコウだ。大丈夫か?」  皓の流暢な英語は、一切の気負いのない自然なものだ。皓の通う私立高校は、独特の語学教育で定評がある。中でも帰国子女でアメリカ国籍の父を持つ皓の英語はネイティブと変わらず、周りから一目置かれていた。  ややあってようやく聞こえてきたのは苦しげな呻き声だった。皓は思わず顔を顰めた。 「申し訳ないけど、放っておいて欲しい」  一しきり呻き終わった後、皓のアメリカ英語のアクセントや単語選びとは異なった、イングランド英語で返事が返ってきた。どこがどう違うのかは説明できなくても、皓はその響きに上品さと育ちの良さを感じずにはいられなかった。 「大丈夫じゃないだろ?」  こんな所で倒れられでもしたら面倒だ。皓はドアの前まで行くと、ジーンズのポケットから手を出して扉をノックした。 「一人にしておいてもらいたい」  持って回った言い回しで震える声が答える。皓は溜息をついた。転校早々、いや来日早々、気の毒だ。 「落ち着いたら出てこいよ。外にいる」     
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