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思わず大きく息をつくと、皓が意外そうに聞いた。
「もしかして、疲れた?」
「平気……」
「無理はするなよ」
「うん」
「そこ、外に出られたらいいんだけどな」
無理はするなと言ったそばから、皓がまた階段を昇って行くので、ジュリアンも仕方なしに後に続いた。最上階にあたる、その階段の踊り場には、小さなはめごろし窓がついた鉄の扉があった。ガチャガチャと開かないドアノブを回し、皓が言う。
「屋上、出たいんだけど出られないんだ。鍵閉まってて」
皓に手招きされ、ジュリアンは小さな窓から外を見た。一面コンクリートの広々とした空間が広がっていた。日除けになるものがないので眩しそうだが、開放的だ。
「気持ち良さそ――」
振り返ると、すぐ後ろから皓もまた外を見ていた。距離の近さに驚いて飛び退いたジュリアンは、扉に頭をぶつけた。
「いたっ……」
「何やってんだよ」
「ち、近かったから……」
「え?」
「こ、こんなに近くにいるとは……」
何がおかしかったのか、皓はクスっと笑うと階段を下りて行った。
「早く食おうぜ」
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