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今はそんなことはないが、昔は階級によって就ける職業や受けられる教育は決まっていたと言っても過言ではない。名門のパブリックスクールとなると、自分の息子をかつての学び舎に入学させ、親と同じ道を歩ませようとするケースは今でも少なからずある。まさにジュリアンはその古い気質を受け継いでいる良い例だった。
「そのイングランド人の友達、よく愚痴ってたよ。「ふざけんな、俺はアメリカンじゃない、俺の英語は訛ってねぇ」ってな」
皓が真似たアクセントはコックニーのようだ。そんなおふざけもする人なのかと思うと、少し緊張が解けたジュリアンは口元を綻ばせた。
「そのお友達はきっと、ロンドンの下町出身だね」
「え? 確かにそう言ってたけど、今ので分かったのか?」
皓の心底驚いた様子に、ジュリアンはちょっと得意な気分になった。
「うん。それは凄く特徴的だから……あ、でも、僕、言語の勉強してるから、もっと詳しいよ」
「へぇ……もう専攻まで決まってるのか? 凄いな」
何故か皓は複雑そうに口元を歪ませた。まずいことを言ってしまったのかもしれないが、ジュリアンにはよく分からない。返事に困っていると、皓が再び口を開いた。
「近くに、一軒だけベジのレストラン知ってる」
次から次にパンを平らげていった皓は、早々と最後のパンにとりかかっている。それを見てジュリアンは思う、体格の差は恐ろしいと。
「なんていうお店? 行ってみるよ」
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