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量が少ない分、ジュリアンの方が先に食べ終わってしまった。情けなくなるほど筋肉のついていない腕で、ジュリアンは膝を抱えた。爽やかな風が顔を撫でていくのが気持ちいい。日本の天気は、一日中雨が降ったり止んだりするイングランドとは違って、びっくりするほど安定している。これで湿気が少なかったら最高だ。
「今度、連れてってやるよ」
「あ、ありがとう」
そんな流れになるとは思ってもみなかったジュリアンは純粋に嬉しかった。けれどますます良い人だという印象が強くなってゆく。半年も日本にいないのに、本当に好きなってしまったら、また同じ轍を踏むことになる。失恋の苦しさに、映画や文学の世界で描かれるようなロマンティックなものなど一切ない。酷い絶望に加え、身体の具合まで悪くなるのだから恐怖しかない。
皓はジュリアンの心に陰りが射したのを察したようで、器用に片方の眉を上げると無言で問いかけてきた。
「何でもない」
顔を背けた拍子に、太陽がジュリアンのブロンドを捉え眩しいまでに引き立てた。
「両親ともブロンド?」
すっと伸びてきた皓の手が、何の気なしにジュリアンの髪を摘まんだ。
「そ、そうだよ」
びっくりして喉が詰まり、声が掠れた。だが皓はお構いなしに、摘まみ上げた髪を観察している。
「こんなに綺麗なブロンド、初めてお目にかかった」
触れられるのに慣れていないジュリアンの身体は、ギシギシ音がしそうなほど強張った。
「怖がるなよ。もう痛くないか?」
「え?」
「さっき、ドアにおもいっきり頭ぶつけて痛がってただろ」
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