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やっぱり怖がられているのだろうか――本気で怯えているように見え、何もした覚えのない皓は困惑する。さっき壁に手を掛けて背伸びして身を乗り出していた姿といい、些細なことでビクビクする様子といい、まるで臆病な子猫を苛めているような気分になってくる。
「えっと……、あの……この間、家族に怒られなかった?」
「え? あぁ、大丈夫大丈夫。母親と二人だし、彼女、夜は働いてるから」
「あ、ごめん……」
「謝る必要ないって。お前、色々気にし過ぎだ」
イギリス人は足を踏まれても謝ると聞いたことがあったが、皓はジュリアンが何を謝っているのかも分からなかった。
「……一人でいることが多いの?」
意図はよく分からないが、ジュリアンが必死に話を続けようとしているのは理解できたので、皓は丁寧に応じた。
「いや、誰かと遊んでる方が多いな。アラタ達とつるんだり、知り合った女の子とその気になったら寝たり」
それを聞いたジュリアンは皓の方が驚くほど悲壮な顔をした後、聞き逃しそうな小声で呟いた。
「恋人が……」
「いいや。彼女は作らない」
「どうして?」
何がそんなに気になるのか、いかにもウブそうな顔をしてジュリアンは真剣に尋ねてくる。
「縛られるのは嫌なんだ」
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