2.

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 軽蔑されそうな気がして、皓は視線を逸らした。いや、されたからどうだというのだろう。自分は人の評価なんて気にしない性格だと皓は自負していたが、どうも会ったばかりの子猫のような留学生には調子を狂わされる。だが、もっと不思議なのはそれが特に不快ではないことだ。 「……寂しくないの?」   そう問いかけてきたジュリアンの口調は、軽蔑や嫌悪ではなく、詮索好きなクラスメイトのそれとも全く違っていた。 「寂しい? まさか。ガキじゃあるまいし」 「そっか……」  小さく呟いたジュリアンの前髪が急に強く吹いた風になびき、毛先が目に入ってしまったのか、彼はぎゅっと目を閉じた。  緑の瞳を不安げに泳がせているジュリアンとちゃんと会話してみると、真面目すぎるきらいはあるが、興味が尽きない。ただ遊び歩いて馬鹿話をするのは他の奴らで十分だが、ジュリアンとはもっと違う話ができそうだ。 「……一人は嫌じゃないの?」  さっきの返事は、満足ゆくものではなかったのか、ジュリアンは再びそう尋ねてきた。 「寧ろ一人の方がいい。誰にも干渉されず自由、だろ?」 「そっかぁ……」  綺麗なジュリアンの瞳に陰りが帯びた。分かりやす過ぎるが、その憂いの原因を皓は知る由もない。 「面倒は避けたい。家族も女も。お前の価値観からすると、冷たく感じるんだろうな」 「そんなことない。人それぞれだよ」 「……分かってくれて嬉しいよ」 「分からない人が多いけど、僕は、そうはなりたくない」     
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