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 迷いのない口調とは裏腹に、ジュリアンの表情は、戸惑ったような悲しげなものだった。まるで自分の事のように言い切る彼にも、何か面倒な事があるのだろうか。 「……寮生活は寂しかったのか? それとも、もうホームシック?」 「え? ……家が恋しいわけじゃないけど」  ジュリアンがパブリックスクール時代、寮で生活していたのは、新太から聞いた情報なので、皓が何故知っているのか不思議に思ったのかもしれない。皓は言葉に詰まっているジュリアンに更に畳みかけた。 「けど? 勉強が大変だった? 寮って軍隊みたいに厳しいのか?」  立ち入った質問はするまいと思っていた皓だったが、勝手に興味が口をついて出てしまう。ジュリアンの分かりやすい反応のせいだろうか。 「厳しいといえば厳しかったかな。でも、過ごしやすいといえば過ごしやすかったよ」  返ってきた返事は曖昧だった。皓はアメリカから日本に戻ってきた時、ともすれば逆の意味になる曖昧な日本人の表現に随分と苦労した。それらを正確に理解しようと努めてきた結果、今では気付かなくていいことまで気付いてしまう。 「ん? そういえば、パブリックスクールはもう卒業してるってことは、俺らより一歳上?」 「途中で飛び級したから一年早かったんだ。まだ十八だよ」 「じゃ、同じだ。勉強、得意なんだな」     
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