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「父の勧めでそうしたんだ。研究職に就くなら、早く色々経験しておいた方がいいって言われて」 「将来の仕事まで決めてるのか?」 「うん……父は自分と同じような日本文化の研究をさせたかったみたいだけど……言いなりは嫌だった。だから専門は違うんだけど」 「大学の先生になりたいのか?」  皓には、研究職というもの自体がピンと来ていなかったが、同じく新太の情報で、ジュリアンの父親が大学で教えているということは知っていた。 「多分、そうなるのかな……今はまだ分からないけど。研究自体は、割と性に合ってるみたいだから。フランス語と英語に関する音韻論をやってるんだ」  それがどんな研究なのか皓には全く分からなかったし、将来について真剣に考えた事もなかった。しかし、また別の疑問が沸いてきた。 「じゃ、なんで日本に?」 「それは……」  言葉に詰まったジュリアンの表情が途端に曇る。 「いや、言いたくなかったらいいんだ」 「うん……」  取り繕うようにぎこちなく顔を向けてきたジュリアンと、視線が一瞬だけぶつかり、すぐに離れた。どうしてもジュリアンは人の目を見るのが苦手らしい。     
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