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 今まで黙っていた皓が指摘した。週末、新太の発案でジュリアンのため、日本文化堪能ツアーをしようということになり、どこに行くか相談していた。皓の言う通り、紘明の提案した場所は、有名なテーマパークではあるが、どう考えてもアメリカ発祥だ。 「でもなぁ……こいつらと違ってずっと日本にいる俺も、いざ日本文化って言われると、大仏とか寺とか温泉しか浮かんでこないんだよなぁ」  日本文化という点に、発起人の新太より、紘明の方がこだわっている。 「だから、それ系は却下だって、ジジくせぇー」  新太は伸びをするように仰け反って、皓の背中に身を投げ出した。すぐに皓の肘鉄を食らい、椅子から落とされた。ジュリアンは、小突き合いを始めた皓と新太を羨ましく思いつつ、紘明に向き直った。 「オンセンじゃないなら、どこでもいい。そのテーマパーク、行ってみたい」  イングランドには、裸で他人と風呂を共にする文化はない。皆で一緒に、いや、皓と一緒に一糸纏わずに同じ空間にいるなんて、ジュリアンには狂気の沙汰としか思えない。  紘明は、満面の笑みを浮かべると両手をパンっと叩いた。 「よし、ジュリアンがそう言うなら決まりだな」     
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