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 呑むと近くにいる者なら、誰彼構わずベタベタと妙な真似をせずにはいられないらしいが、皓の知ったことではない。ベンチに腰を下ろすと、新太も自ら進んで引きずられるようにしてくっついてくる。面倒臭くなり、皓は膝の間につっぷした新太を引き離すのは諦めた。 「でもコウ、アイツ可愛いよな。ブロンドにグリーンの目。女みたいにほっそいし……。スティーブはお前並みにごつかったから新鮮だなぁ」  スティーブとは昨年の留学生だ。毎年、各クラスに一人は必ず留学生がやってくることになっている。 「おいっ、コウっ、聞いてんのかよ? お前、ほんとオトコマエだよなぁ」  相手の痛みなどお構いなしに新太は、脈絡のないことを喋っている。皓の太腿にグッと肘をついて起き上がると、イヤラシイ手つきで顔に触れてくる。 「酔っ払いが……いい加減にしろ」  皓は溜息交じりに言うと、新太の腕をバシっと鷲掴みにした。そして取っ組み合いが始まる。それはいつものことで、どうせ皓が勝つのだが新太は毎回懲りない。そうこうしているうちに、ふと皓は背後に視線を感じて振り返った。自販機の明かりに照らされた青白い顔が、不審げに彼らの様子を伺っていた。 「ジュリアン、大丈夫か?」  皓がそう尋ねると、ジュリアンは消え入りそうな声で答えた。 「な、何……してるの?」 「え? あ、これか?」  太腿に押さえつけていた新太の頭を皓は離した。すかさず顔を上げた新太は、新しい獲物を前にして目を輝かせる。     
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