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身を屈めた皓に顔を覗き込まれ、ジュリアンはあまりの距離の近さに仰け反った。
「缶一本も空けてないんだって? さっきは青かったけど、今度は顔、真っ赤だぞ」
「あ、あの……」
確かに少しの酒で酔っただけで、ここまでボロボロになるのはおかしい。見知らぬ土地でまた体調不良がぶり返すなんて。そう思うと余計に具合が悪くなってきた気がして、ジュリアンはもう一度ベンチに腰を下ろした。
「お、おい、大丈夫か?」
焦った顔で皓がジュリアンの両腕を掴む。大きな力強い手に触れられ、一気にジュリアンの心拍数が跳ね上がる。
「ん? 身体熱くないか?」
「分らないけど体調、あんまりよくなくて……」
「そうか……あー家はどこだ?」
「学校から十五分くらいの所だけど……」
「十五分か。自転車借りてくるから寝てろ。送ってく」
そのワイルドな容貌には似つかわしくないほど、そっとベンチに横たえられたのに驚いたのも手伝って、ジュリアンは再び砂浜へ走って行く皓の後ろ姿を無言のまま見送った。そんなふうに優しく誰かに触れられたのは久しぶりだった。
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