ACT 1

39/74
50人が本棚に入れています
本棚に追加
/242ページ
そんな妄想と罪悪感の狭間で格闘しながら、1時間半。 「じゃあ、これで完成ですね」 最後の資料を印刷し終わって、ようやく笑顔を見せてくれた。 あ、やっぱり笑顔がいいな、うん。 やっぱり叱られるのは嫌だな。 「もう2時ですね」 涼子ちゃんは軽く肩に手を当てながら、吐息混じりに言った。 あーそれ、マズいヤツだよ。 変な妄想いっぱいしちゃうヤツだよ。 僕は自分の気持ちを戒めるためにも、軽く咳払いをして「今日は」と言葉を繋げる。 「ありがとう。今度からはこういうの、なしにするからさ」 「それ、前も言ってましたけど」 横目で見られて「そうだったかなあ」、笑ってすっとぼけて見せる。 だって確信犯だとバレたら、マズい。――この前も、今も。
/242ページ

最初のコメントを投稿しよう!