ACT 1

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今年で30、という大台に乗ってしまった。 同期で同じ年のSM、美月(みつき)は30歳になったその日、「もう最悪、30なんてもう人に言えない。ずっと29がいい! 30なんて嫌!」と、居酒屋で叫んでいた。 分かるよ、確かに。 でも僕的には30という年齢は、むしろウエルカムだった。 だって二十いくつ、とか言うと、年上のSMやDM(ディストリクト マネージャー=地域を総括するSMよりもまだ上の立場の人)は、ちょっと小馬鹿にしたように「あー若いね」「だと思ったよ」「まだまだだね」「だからそんな失敗するんだよ」と、とにかく若さや、経験不足のせいにしてくる。 それが何より腹が立つ僕はむしろ、ようこそ! 30、と思った……のだけれど。
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