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しかも相手はただの女性ではない。
主にとって特別な御方である。
姫に気づかれないよう距離をとったまましばらく悩んだ挙げ句、今度は躊躇なく家令を叩き起こすことにした。
――カレイ、起きろ! 緊急事態だ。
――何だ……ケイゴか? どうかしたか。
――花庭園に姫が一人でいる。寝間着の格好で泣いてんだけど、どうすればいい!?
家令は考え込むように押し黙った。判断を下すまでの数秒間さえ、警護には長く感じられる。
と突然、何か気配を感じたのか、姫が顔をあげてこちらを見た。
姫と警護、二人の視線が重なる。
――カレイ。姫と目が合った……どうすればいい!?
――慌てるな。五分もたせろ。
――無理! 三分で来い!!
家令が舌打ちする気配を感じた後、意識を離す。その間、警護の目はずっと姫に吸い寄せられたままであった。
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