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薄明かりの中、仄かに浮かび上がる華奢で儚げな白い姿。髪色が漆黒なので、頭部が闇に溶けて見える分、繊細な造りの顔立ちがより鮮明に見えた。目元や頬に残る泣きあとが痛々しい。
姫のほうも、涙で潤んだ瞳を見開いたまま、まばたきもせずにこちらをじっと見つめている。驚いているのか、戸惑っているのか、怖がっているのか……警護に推しはかる術はなかった。
そのまましばらく、どちらも微動だにしない。というか出来なかった。動いたら二人の間の均衡が崩れてしまうからだ。
なのに、無意識に腕に力が入ってしまったのであろう、不意に左手に持っていた剣がカチャリと小さく音をたてた。
姫の視線がそちらに向く。剣を見て小さく息を呑み、立ち上がるのを見た瞬間、警護は反射的に声をかけた。
「警護です!」
姫がゆっくりと問い質す。
「……ケイゴ?」
「そう! 警護です」
警護が大袈裟なくらいに頷きながら再度言うと、姫も小さく頷いた。
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