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合戦三日目;弟子と稽古
俺は鶴を弟子に取った。
鶴にはああ言ったけど、実際のところ本当の弟子として認めたわけじゃない。まだ刀を振るうことを恐れている時点で、弟子としては半人前だ。
まだまだ修行をしなければならない。
俺と鶴は、初めて刀を交えた丘の上まで来ていた。
奇襲作戦まであと6日。
鶴の初陣となる戦いに向けて、少しでも強くなってもらうため、稽古をつけることにした。
「んんー!きもちぃ」
鶴は俺の弟子になってから、 ずっとこんな感じでごきげんだ。丘の上まで来ると、大の字になって寝っ転がり、遊びにきた子供のようにはしゃいでいた。
「こら、遊びにきたわけじゃないからな」
叱ってはみるものの、俺も別に本気で怒って叱っているわけではない。、俺も昔、父と修業に行くとき、鶴と同じようにはしゃいでいたから。鶴の気持ちがわからないわけではない。
だが時は金なり。初陣まで日にちがない。小休止してさっそく稽古を始める。
俺は鶴に木刀を渡す。
「実践のときも、それで戦ってもらうつもりだから」
俺の言葉に鶴は頓狂な声を上げた。
「師匠、刀じゃないと相手を切れないです」
「あの時も言ったろ。まだ鶴は相手を切ることにためらいがある。それは戦場に立った時、命取りになるんだ。それなら、木刀の方が全力で戦えるし、そっちの方が安全だ」
「……わかりました」
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