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俺は7歳の少女を弟子にとった。
「はぁはぁ……、師匠……すごい……」
目の前の少女は、つるっとした頬を林檎のように染め、激しい吐息を漏らしながら、前かがみになって俺を見つめる。
「ははっ……鶴もなかなか我慢するじゃないか」
「だって、……師匠とずっとこうしていたいんだもん」
「俺も、鶴とずっとこうしてたいよ」
鶴のテクニックは中々のものだった。俺は今まで沢山のやつを相手にしてきたけれど、鶴のテクニックは幼いながら、それは大人に引けをとらない素晴らしいものだった。
「鶴、準備はいいか?」
「……はい。いつでもきてください」
「わかった……それじゃあ、行くぞ!」
____俺は地面をおもいっきり蹴って飛び出した。
鶴もそれに合わせて一気に俺に近づいてくる。
……速い!
俺の予想をはるか上回るスピードで接近してきた鶴は、一瞬で俺の懐に潜り込む。
鶴はスピードを落とさず、手に持った木刀を下から上に振るった。
俺はそれをなんとか木刀で受ける。
……重いっ!
小さな少女が放ったとは思えない、力強い一撃に俺は思わず声を漏らす。
「強いっ……!」
だが俺も、少女が振るった勢いで、地面から足が離れたのを見逃さなかった。
攻撃をいなし、その勢いで右側からおもいっきり木刀を振るう。
鶴はそれをギリギリのところで、なんとか木刀で受けた。
「ヴッ!」
鶴は空中で攻撃を受けたため、それを躱しきることができず、呻き声を上げた。
鶴は勢い良く青空に放り出された。
「いたたっ……」
「だっ、大丈夫か!?」
俺はお尻を痛そうに押される鶴のもとへ駆け寄る。
「大丈夫です。えへへ……また負けてしまいました」
鶴は舌を出して笑った。
「怪我とかしてない?」
「大げさです。見ての通り、大丈夫です」
見たところ、切り傷とかはなさそうだ。よかった。
「少し休憩しよっか。水持ってくるからちょっと待って」
「はい!」
弟子の元気のいい返事を背中で受け、俺は近くを流れる河原まで走った。
___1616年。俺たち2人の物語はここから始まった。
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