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俺は足にぐっと力を加える。姿勢を低くし、地面を思いっきり蹴ったその時。
少女が動いた。
一瞬で加速した少女は、一気に俺の懐に潜り込んだ。
……くそっ!
少女が放った渾身の一撃を、なんとか木刀で受ける。
……重すぎるっ!
その一撃で体勢を崩した俺に、少女はすぐ突きを入れる。俺はギリギリのところでその刃先の向きを変える。
「……やったなっ!」
俺はすぐに反撃に出た。少女の攻撃をいなし、すぐさま木刀を少女に向かって振り下ろす。
少女はその一撃を木刀で受けず、後方へ飛んで回避した。
お互いにまた自分の間合いを取り直す。
「強い……」
本心が口から溢れる。この子は強い。強すぎる。
初撃。俺が前に出ようと思った瞬間、少女は俺との距離を一気につめた。意表をついた出だしに思わず舌を巻いた。そしてその速さを殺すことなく、その速さを力に変え、俺に強烈な一撃を叩き込んだ。そして最後の俺の攻撃。本来ならここまで接近したなら普通は木刀で受ける。だが、もしあれを木刀で受けていたら、少女は力負けして完全に体勢を崩して、2発目の俺の攻撃を避けきれなかっただろう。
少女は己自身の弱さを、誰よりも知っている。
知っているからこそ、あのような動きができる。俺はこの子との一連の戦いでそう確信した。
俺は震えた。
この子と、もっと戦いたい。
本気の勝負をしたい。
俺は腰につけていた、鞘に入ったままの小刀を少女に投げる。
「これは?」
驚いた表情を浮かべる少女に、俺は言った。
「今度はそれを使って勝負だ。それを俺に当てることができれば、弟子にする」
「そんな!?けどそれだと師匠が……!」
「その時はその時だ。それに刀を振るうことができないなら、仮に君を弟子にしたとしても、戦場に立たせることはできない」
「ッ……!?」
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