合戦一日目;浪人武将と7歳少女との出会い。

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俺の言葉を聞き、少女は何も言わず鞘から小刀を抜いた。 小刀を握る少女の手は、震えていた。 ギラギラと光る小刀をみて、怯えるかのように。 ……やっぱりだめか。 「やれる」  俺の心を見透かすように、少女は何度もその言葉を口にした。 俺は何も言わず、手に持った木刀を少女に向ける。 いつでもこい。 少女は小さな口をきゅっと結び、切先をじっと見つめる。 今度はさっきと違い、ジリジリとゆっくり間合いをつめる。 「どうする」  切り合いになったら少女に勝ち目はない。力で圧倒的に勝る俺の方が有利だ。 「どこで仕掛けてくる」  俺は心の中で問う。 少女と俺の刀は、交わりそうなくらいに近づいていた。 仕掛けたのは俺だった。横一閃で切りを入れる。少女はそれを抜群の反射神経で避ける。 「ここだ」  彼女を試す絶好の機会。  今の俺は無防備と言えるほどに、少女が俺を切るのに容易な状態だった。 だが、少女は切れなかった。 一瞬のためらいの後、放たれた攻撃を、俺は後方に下がって避けた。 俺は手に持っていた木刀を下ろす。 「……やっぱり、君を弟子にすることはできない」 「なっ!?」  ショックのあまり、少女は手に持っていた小刀を落とした。 「技術はすごい。そこらにいる兵士なんかよりも、数倍強い」 「……ならなんで?」 「 君は、相手を切ることにためらいがある」 「それは、相手が師匠だから。だから、切れなくて……」 「親しい人間でも、敵になって現れたら切らなきゃいけない。切らなければ、こっちが死ぬ」  戦いの世界は残酷だ。    そこには生きるか死ぬか、それしか存在しない。  たとえ生き残ったとしても、残るのは相手の首を切った時の、あのゴリゴリとした骨の感触のみ。  俺は少女が落とした小刀と鞘を拾い、その場にしゃがみ込む少女を残してその場を去った。
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