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いままで黙っていた鶴も、敵との圧倒的人数差に思わず声を漏らす。
「だから手練が一人でも多く欲しいんや。それに十兵衛はんからしたら、兵2000なんて一人でも蹴散らせるやろ?」
「馬鹿言わないで下さい。流石の俺でも……」
「がっはっは。夏の陣で兵20000相手にしといていまさら謙遜されても。というわけで、頼んまっせ」
「はぁ」
「それで、奇襲をかける場所についてなんだが、五街道の長崎路のどこかで奇襲をかけようと思う」
「長崎路かぁ……ここからかなり距離があるな……」
五街道は、1601年頃から藤川家盛によって作られた主要道路だ。盛安はここを通るだろうと考えているらしい。
「前日にはここを出てもらって、夜のうちに長崎路周辺で待機していてほしい」
「わかった」
「それじゃあわいはそろそろ退散するとするかな」
立ち上がった盛安の足取りは、まだおぼつかないように見えた。
「それじゃあ鶴の嬢ちゃん、よろしく頼むよ」
「鶴。ちょっとそこまで送ってくるから、ここでまってろ」
鶴は正座のまま、「はっはい!」と返事をして、嬉しそうな表情を浮かべた。
俺は盛安に肩を貸す。
「おっと。すまねぇ」
「いや、別にいいけどさ」
俺は盛安に聞きたいことがあった。
「どうして鶴の参加を断らなかった。あいつはまだ小さくて、戦場なんかとても……」
盛安は俺の言葉を笑い飛ばした。
「半兵衛はんが心配する気持ちはわかるけどよ。半兵衛はんが弟子と認めた子や。きっと腕がたつにちがいねぇとわいは思ったんだわ」
「まぁ、確かに技術はすごいけど」
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