合戦一日目;浪人武将と7歳少女との出会い。

3/9
前へ
/48ページ
次へ
現在は身を潜め、名も無き集落で生活している。 「……政府からの納税が厳しくてねぇ。家で作った米を全部納めても足りないくらいだよ」 「うちも作った織物は全部政府へ納めてるよ。毎日生きるだけで精一杯さ」  ……家盛が天下統一してからというもの、それは独裁政治も甚だしかった。 政府の圧力が強かったのは九州、中国。西側地域全域だった。 俺もここ最近はまともな食事を殆どとれていない。 「狩りにでも出かけるか……けどなぁ」  ここ数日、政府の武士たちがこの辺をうろうろしているのを目撃した。下手に出かけて見つかるのだけは避けたかった。 俺の顔は政府の人間なら誰でも知っていた。家盛を最後まで苦しめた武将の名で、幸正と俺は全国に広まっていた。幸正は『日ノ本一の兵』と、一方の俺は『桜花を散らす兵』と呼ばれた。 トントン……木の板でできた戸が音を鳴らす。 ……こんな昼間っから客か? 俺は政府の人間が来たかもしれないと思い、部屋にあった木刀を腰に隠す。 ゆっくりと戸をあけると、そこには誰もいなかった。 「いたずらか」  再び戸を動かし始めたその時、 「あっ、あの!」  声は思っていたよりも下の方から聞こえた。 目の前に立っていたのは、布切れ一枚を体に巻いた、小さな少女だった。 「私を弟子にしてくださいっ!」 「はっ?」  思わず声が出た。えっと、なんだって? 「私を、弟子にして下さいっ!」 「ちょ、ちょっとまて」  少女は不思議そうな目でこちらを見た。 「その、弟子っていったいどういうこと?」 「だから、十兵衛師匠の弟子にしてくらはい!」  あっ、噛んだ。
/48ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加