11人が本棚に入れています
本棚に追加
少女は舌を出して、目にいっぱいの涙をためていた。やっべ。
「と、とりあえず、入ってお話しようかっ!」
このまま外に放り出したら、俺の家が目立っちまう。外で政府の奴らもうろうろしてるし、ここに集まられたらまずい。
「うん……」
頷くと、大人しく建物の中に入った。
俺と少女はいろりを挟んで向かい合って座る。少女は背筋をピンと伸ばした。
「鶴と申します。7さいです」
「俺は、足利十兵衛」
「えっと、その、師匠の弟子にしてください!」
「急にそんなこと言われても」
いきなり土下座モードに入った少女に、顔をあげるように言う。
「俺はいままで弟子を取ったことなんてないし。そういうのはほかのやつに頼んでくれないかな」
「そんなっ……でも!」
「とりあえず涙拭いて。しばらくここにいていいから。落ち着いたらすぐに家に帰るんだ」
「でもでも!」
駄々をこねる少女に頭を抱えた。どうしたら良いんだ。
「これ持ってきました!せめてお話だけでも聞いて下さい!」
少女は手に持っていた藁の袋から、大量の白い粒を取り出した。
俺はそれを見て、少女の鼻先に当たりそうになるくらい顔を近づけて言った。
「もしかしてそれ……米?」
「はい!」
喉がゴクリと音を鳴らす。米なんて食べるのは一年ぶりだ……!
「けど、俺米なんてもらっても炊けないし」
「私が炊きます!」
少女は息継ぎを忘れて言う。
「だから、私の話だけでも聞いて下さい!」
少女の熱心な説得に、俺は仕方なく頷いた。
「……わかった」
少女は「やったー!」と声を上げる。喜びが体全体から伝わってきた。
そんな少女の姿をみて、自然と笑みが溢れた。
最初のコメントを投稿しよう!