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流石に布切れ一枚の少女を家に上げるわけにはいかないので、俺は持っていた小袖を着るように言った。そのままでは大きすぎたので、少女の丈に合うように生地を切った。着崩れしないように、余った生地を帯代わりにして、腰につけさせた。
部屋全体が米の香ばしい香りに包まれる。
少女の手際は見事なもので、その姿に「おぉ…」と感嘆の声が漏れる。
少女は米の他に味噌を持って来ていた。味噌は高級品だ。俺も武将時代の時、一度しか口にしたことがない。あの絶妙な味は今でも鮮明に覚えている。
釜で米を炊いている間に、味噌汁の準備をしていた。放置されて埃を被っていた野菜を洗い、食べれそうな部分だけ切り取り、それらを水の入った鍋に勢い良く入れる。
艶のある米、そして味噌汁が列ぶのを見る頃には、空腹は限界に達していた。
「「頂きます」」
声を合わせて言うと、 俺は白く輝く米の塊を、箸で掴んで口の中に放り込む。
……うめぇ。
噛めば噛むほど口の中に米の甘さが広がる。
味噌汁もうまかった。絶妙な塩加減で、野菜もしっかり味噌の味が染み込んでいた。武将の時に食べていた飯の数倍うまく感じだ。
喋ることも忘れて、俺は一心不乱に食べ続ける。鍋と釜にあれだけたくさん入っていたご飯と味噌汁は、気がつけば綺麗さっぱりなくなっていた。
「ごちそうさま……」
俺が言うと、少女はとても嬉しそうに笑った。
「味噌なんてこんな高級品、よく手に入ったな」
「お父様がこれを持ってけって言ってくれて」
少女の表情は急に真剣味を帯びる。俺も食べてしまった以上、少女の話を聞かなければならない。
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