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少女は今ここにいる。
「お願いします。私を弟子にして下さい!私は……ちちの仇を……とりたい!」
怒りと憎悪に満ちたその表情からは、少女の面影はどこかに消え去っていた。
少女の弟子入りがどれだけ本気なのか、理解した俺は少女に向かって言う。
「……わかった」
「……?」
「それじゃあ、今から試練を与える」
「!?」
「それに合格できたら俺の弟子にしてやる」
「……はいっ!」
少女の顔つきは、それは戦場にたつ武将そのものだった。
俺たちは家を後にして、ひと目につかない木々に囲まれた丘の上に移動した。
俺は手に持っていた木刀を少女に渡す。
「ここで俺と一対一の勝負をする。それを一発でも俺の体に当てることができれば、弟子入りを認める」
「ほっ、ほんとですか!?」
「嘘は言わない。その代わり、一発も当てることができなかったら、弟子入りは認めない。」
「……」
無言で頷くと、俺達はお互いに距離を取る。
「それじゃあ、いつでもかかってこい」
少女は背筋を伸ばし、俺をまっすぐと見据える。木刀を握る手に力が入る。
辺りは一瞬で静まり返った。聞こえるのは、木々が風に揺れて擦れ合う音だけ。
空中で少女の視線と俺の視線が火花を散らす。どちらが先に仕掛けるか、無言の駆け引きが続いた。
……こっちから仕掛けるか。
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