十二月の夏

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麗子は、冴子にとって、ある意味理想の女性だった。シドニーにはもう十年以上住んでいるということだが、英語には不自由せず、正統派の美人ではないが、背筋のまっすぐ伸びた姿勢で、服装のセンスも良く、働く人間の緊張感もあり、生き生きとした魅力的な女性だった。一番いいのは海外に住んでいるという上ずったところが微塵もないところだっ た。冴子と2才ほどしか違わないが、とても若く見えた。長年のパトリックというボーイフレンドも好青年だった。 「冴子さん、来週からキャンプホリデーですね」 昭夫が恒例のホリデーにはキヤンプにでかけることを、会社の誰もが知っている。 「今年は、海が見えるブッシュらしいわ。でもキャンプなんて、若者のレジャーじゃないかしら。私たちのような中年がジーンをはいてキャンプなんて、ちょっとね」 「とんでもない。ここでは七十代や八十代の老人でもキャンピングは、大人気のレジャーですよ」と、目を丸くして訴えた、その表情と、突然80代の老人に話が飛んだことがおかしく、冴子は笑った。 「麗子さんは次のホリデーはどこへ」 「ええ、日本へ帰る予定です」 「パトリックさんと」 「はい」
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